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今月のエッセイ

『カンブリア爆発』加藤愛一



今回は恐竜時代と並んで最近私が図鑑でよく描くカンブリア紀の生き物について述べたいと思います。
カンブリア紀とは古生代の最初の時代約5億4100万年前から4億8540万年前の時代です。
以前はカンブリア紀というとクラゲや珊瑚、せいぜい三葉虫がいるくらいと考えられて来ましたが実は生命史の中でも非常に重要な時代ということがわかってきました。
まずカンブリア紀の話の前にそれ以前のエディアカラ紀の事をお話ししたいと思います。
40億年前に生物が誕生してから六億年前のこの時期になってようやく目に見える大きさの生き物が誕生しました。
中には1m近い物もいましたがそのどれもが頭部も胴体もなく軟体性の生き物で種類も少なく海中の微生物などを食糧源としていました。
非常に平和的な?世界だったと言えるでしょう。
(下図 講談社MOVE図鑑 大むかしの生き物より)

ところがカンブリア紀になるとこうした世界が激変します。
まず生物の種類が爆発的に増えました。(そこからカンブリア爆発と言われるようになったのです) その中には今日の生き物につながる種もいましたが、多くは子孫も残さずその後絶滅してしまいました。
またこの時代の特徴として目を持つ生き物が誕生した事です。目があれば獲物を容易に探す事が出来ますし、また弱い生物は敵の接近をいち早く感知する事が出来ます。
また硬い甲羅を持つ生き物も出現して敵の攻撃を防ぐ事が出来るようになりました。

以下この時代の特徴的な生き物をいくつか挙げていきたいと思います。
まずこの時代最強の生き物がアノマロカリスです。
アノマロカリスとは奇妙なエビという意味ですがそれは最初に発見された触手が海老の尻尾と考えられたからです。
また口はクラゲの仲間と思われました。
ところがその後アノマロカリスの全身像が見つかったことからそれらが一つの生き物だというが判明しました。
アノマロカリスは当時他の生き物が数センチしかなかった時代に1m近い大きさでまさにこの時代の王者という存在でした。

(アノマロカリス 講談社MOVE図鑑 大むかしの生き物より)

次にこの時代の象徴と言える生き物にハルキゲニアという生き物がいます。
ハルキゲニアとは夢想を意味するラテン語でこの生物にふさわしいと言えるでしょう。
大きさはわずか数センチですが発見された当初は尖った脚で歩き背中にはチューブ状の管のある奇妙な形と考えられていました。
ところがその後上下逆さまだった事がわかり現在では下図のような形と考えられています。これでも十分奇妙ですが。

当初の復元図

現在の復元(講談社MOVE図鑑 大むかしの生き物より)

三番目に紹介するのはオパビニアという生き物です。
大きさはやはり10cm程度でしたがこの生物にはなんと五つの目があったのです。
また頭部には象の鼻のような器官がありこれで獲物を捕らえて口まで運んでいたと思われます。
この生物が学会で初めて紹介された時そのあまりに奇妙な姿に会場が笑いの渦にまきこまれたというエピソードが残っています。
ただ頭部を除くと胴体の両側に鰭と鰓がある点でアノマロカリスに近い種類ではと考えられています。

オパビニア(講談社MOVE図鑑 大むかしの生き物より)

奇妙な生き物ばかり紹介してきましたが次は今日の私たちにつながる生き物を紹介したいと思います。
名前はピカイアといいやはり5cmほどの小さな生き物です。
この弱々しく見える生き物の何が重要かというとピカイアが脊索という体の中心を支える構造を持っているという点です。
脊索は後に脊椎に進化していきます。
つまりピカイアは人間につながる脊椎動物の祖先という事になります。

ピカイア(講談社MOVE図鑑 大むかしの生き物より)

カンブリア紀の生き物は今日でも次々と発見されています。
その多くは最初に述べたように子孫を残さず消えていってしまいましたがカンブリア爆発は私たちに生き物のダイナミックな進化を伝えてくれています。