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今月のエッセイ

2011.3.29 『日和山から(石巻)』ささき ひろみ


梅

                         

先日とてつもなく大きな地震が起きて、
たくさんの人や街を飲み込んで行ってしまいました。
私の実家の港町もその一つでした。
幸い両親家族とも無事で、丘の上に建っていたため
家も流されずにすみましたが、帰省する度にあちこちふらふらと
出かけてはスケッチしていた何気ない風景が、すべて
絵の中だけのものになってしまいました。

お盆の頃、神社と墓地を通って海沿いの町へ続く石段で、
お線香の匂いとじりじりした日差しの中、
時々海から吹く風を待ちこがれながら、
アスファルトに腰掛けてぼんやり時間を過ごす。
空腹を覚えて、階段の下にひしめき合っているたくさんの家の人々の
夕ご飯は何かなと想像しながら、来た道を戻る。

街の人々が直面している出来事はあまりに壮絶で、
こんなセンチメンタリズムに浸っていられることが、
自分は単なる遠方の傍観者であることを思い知らされます。
私に出来ることは少ないけれど、この小さな街のファンとして
必ずまたここから復興した街の絵を描く日が来ると、心から信じています。