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今月のエッセイ

2012.12.1 『子供の絵』ささきひろみ


                                         
4歳の息子がいます。
幼稚園で、「枝豆」を収穫し、それを写生したというので
機会のある時に見に行きましたところ、壁一面に飾ってある絵
の中に一匹のゲジゲジを発見。あ、あれがうちの子の絵だ。
薄い黄緑の楕円形が用紙の10時の方向に小さく描いてあり、
たくさんの毛が全方向に放射状に描いてある、これは時々
家の中で素早く動いているあのゲジ(蚰蜒)?

しかしながら親のひいき目で考えてみると納得のいく部分も
あるのであります。
北海道で収穫した枝豆は本州や外国の枝豆に比べ
どうしても色が薄くなり、黄緑に描いた訳も分からないではない。
そして毛は、きっと収穫したばっかりで毛がいっぱい生えている様が
息子にとって大変印象深く、どうしてもそこが気になって仕方
なかったに違いないのです。
「ああ、毛がいっぱいあってびっくりしたんだね」
という絵なんでしょう。
周りの絵もよく見れば見る程本人達の気持ちが良く描いてありました。
無数の小さな緑の丸の絵。
一面緑のなにか。おそらくヤマのように積んであった様なのでしょう。
大きな丸を一個描いているのもありました。
「たくさん採れたよ」
「中に豆がはいっていたんだ」
「全部実を出してから食べるよ」
と、収穫して絵にして食べて、という1日の子供の声が
聞こえてくるようでした。
子供の絵の持つ「伝える力」に心から楽しませてもらいました。
大人になって上手に描かなきゃ、とばかり考えて描くようになってしまうと、
こういった絵を見るだけで何か忘れていることを思い出させられます。
「はみ出さないで塗りなさい」「もうちょっとバランスよく」と
子供の絵についての評価を満足いかない様子でしているママ友達の中、
胸がいっぱいになって、得した気持ちで帰って来たのでありました。

※この記事を書くにあたって当然枝豆の絵の写真を載せるつもりで
本人の承諾を得ようと思ったらどうしても許可が下りず、
「上手くかけてる絵にしてくれ」と、機関車の絵になりました。

こっちは4歳なりに上手く描けてると思いますが、
だんだん面白い絵を描かなくなり、「上手な絵」しか見れなくなると
思うと少し寂しい気がします。


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