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理科美とは

理科美術協会が設立されてほぼ半世紀が経過した。我が国に於いて本格的な生物の調査研究がなされる様になったのは、シーボルトの来朝によるもので、彼はその結果を後日かの『Fauna Japonica』にまとめて出版したが、その中には当時の日本人画家の手になる図も多数収録されている。
これらの図を描いた日本人画家はそれまで花鳥風月を描いていた日本画家であるが、シーボルトは彼等に西欧式の画法技術を伝授して近代的な博物画という新しいジャンルをもたらした。

昭和期に入りかの大戦によって一時の頓挫を余儀なくされたが、終戦を迎えて平和が回復するや一時の停滞をとり返すべく旺盛な文化活動が再開され、出版界は、百科事典・動植物図鑑・児童用学習図鑑等の類を続々刊行した。当時その図を描いたのが、結成間もない理科美術協会の人々であった。その後学問の細分化、専門化が進むにつれ画家の専門分化も進み、全ての分野に於いてそれぞれが得意とする部門を分担して描く様になった。画家にも次第に精緻な知見、知識が必要となり、専門家としての技術も次第に高度なものとなった。博物画発足当時と比較すると表現の仕方が大いに進歩し、従って図の美しさ、信用度もはるかに高まった。

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ところで、精巧に描かれた図鑑の絵は一見徹底した写実画と思われがちであるが、これは資料画或いは標本画といって鑑賞用のペン画、リトグラフィーとは異なり、あくまで学問的、科学的な説明の目的に則して描かれた、特別の表現機能をもった画である。従って標本画を描く場合、画家は標本を眼の前に置き、必要な測定などをしながら描いてゆくが、標本をそのまま写実的に写し取るわけではない。先ず信用できる参考書物の記載を読み、その記載に従って数値などを合わせる。ハイライトや濃い陰影など、その個体が元来もっていたものではない外から加わったものは極力とり除いて描くので、立体感など描き表し難いことがある。こうした場合、その種の説明に関係のない所での多少のデフォルマションなどで感じを出す。外形の表現には古来からあった白描の筆使いは参考になり、又利用すると効果的である。ペン先での点描による影の表現は多用するとうるさく、かつ表現したい部分を見難くするが、簡潔に引かれた筆線は無駄がなく美しい。これは描き方の基本としてカラーの図の場合にも言える。

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