2008.5.7 「3本のクワ」 松本晶
2008.5.7 「3本のクワ」 松本晶

ある町を流れる用水路脇に、3本のクワの木が並んで立っている。
この3本にはそれぞれ個性があって、今まさにその片鱗を見せてくれている。
画面一番手前のクワは雌花しかつけないメスの木。
その隣の中央のクワは雄花しかつけないオスの木。
やや離れて立つ画面一番奥のクワは、なんと雌花も雄花もつける両性の木。
3本とも花で真っ盛り。
来月・・いや、早ければ今月終わりにも、甘い実をたわわにつけてくれるだろう。
ただし、それが出来るのはメスの木と両性の木の2本だけ。
そのせいか、オスの木は「ほらほら、今のこのオレを見てくれ!」と言わんばかりに一番ハデに雄花の房を風にそよがせているように見える。
実の形が、これまた2本それぞれ違う。
メスの木には、めしべの跡がしっかり残った小振りで丸い実がつく。
両性の木には、めしべの跡がほとんど無い大きくてやや細長い実がつく。
食べ応えがあるのは後者の方だが、個人的には酸味のある前者の実が好きだ。
3本のクワがこうして並んで根付くまで、きびしい自然選抜と幾度と無く戦ったことだろう。
用水路脇を散歩する人は多いが、この個性ある類まれな3本の存在に気づく人は少ない。
それでも、毎年初夏には、落ちた実で紫色に染まった地面に気づいて立ち止まり、上を見上げる人は少なくないだろう。
さぁ、今年もたくさん実をつけて色々な「生き物」をひきつけておくれ!
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