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今月のエッセイ

2008.7.6 「私の子供だった頃」 梶田達二


作品のタイトル



私の子供だった頃

 それは昭和20年代の前期、私が小学生から中学生の頃の話である。私の住んでいた所は名古屋市内でも未だ田んぼや畑がいっぱいで夏にはよく虫をとって遊んだものだ。中でもクマゼミをとった時の嬉しさは今でも良く覚えている。私が上京した昭和44年頃は、 東京にクマゼミはいませんでしたが、ここ2年位前から時々、クマゼミの声を耳にする様になった。地球温暖化のせいである。クマゼミの卵管は電線のゴムをも突き抜けるとは知らなかった。
 
 さてここでは私の体験から、ヤンマ・トンボの事を少し書く事にします。トンボの習性ぐらい理科美の人は衆知の事と思うが、私なりに思った事を書きます。昼間のオスは畑や田んぼの上に自分のテリトリーを持って同じ所をぐるぐる回っている。メスが集まるのを待つのである。メスが通り掛かると、すぐに捕まえて、メスの首にオスの尾の先をはさんで、水辺に産卵に行くのだ。そこでこの習性を利用して行うのがトンボつりである。メスをつかまえて来て、胴体を糸で結び50センチ位の竹の棒に結んで、畑の上を回っているオスの前でメスが飛んでいる様に回すとオスがからんで来るのをつかまえる。

 オスの色は鮮やかな緑色で羽も透明だが、メスは少し茶色っぽい。羽の色は茶色く濁っている。羽の茶色が濃い方が美人なのかオスがよく来る。メスをつかまえるのは田んぼや葦原の水辺で産卵中を、近くに生えているホウキの木で二匹一緒に押さえつけて取ったりしたものです。ヤンマ・トンボは夕方になるとねぐらへ帰る為、一匹づつになって一定の方向に次々と飛んで行く。この時を狙って取りに行くのも楽しんだものだ。高い所を飛ぶトンボに小石を投げると、虫を思い小石を追って降りて来るところを網で取るのだ(所によっては、小石二つを糸の両端に付けて回す様に投げると糸にからまってトンボが落ちて来るとの事)。
 あの頃は都会でもこんな風景が見られたが、今は田舎では知らないが都会では夕方になってもトンボ一匹飛ばないのは淋しい限りである。トンボは夜遅くなると、川原の葦等に止まって眠る。又それを素手で取る事も出来たのである。

余談ですが、ついこの間、6月中旬の頃我が家の庭にオオミズアオがいたので写真を撮りました。生きたのを見るのは初めてで、東京では珍しいと思います。

梶田達二