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今月のエッセイ

『Aquarium Drawing File』岩本光弘




僕がイラストを始めたきっかけはブログ仲間の依頼でした。
友人がステッカーを作る機械を買ったので、これでステッカーを作って販売したいと。
ついてはそのためのイラストを描いて欲しいと。
お礼に完成したステッカーを何枚かプレゼントしますとのことでした。
今思えば、ステッカーなんて全然欲しくないし、イラストを使って販売するのに数枚のステッカーがお礼って、 どうなんだろうと思いますが、その時はイラストを頼まれて書いたこともないし、自分の好きなロリカリアというナマズの1種を試しに描いてみたのです。
その時に使ったのは、設計の仕事で使うCADソフトでした。
描いたイラストを送ったところ、複雑な模様すぎてステッカーにできないということでボツになりました。



外形だけのラインのイラストを描き直して再度送りました。
その経験がきっかけで、CADでもイラストが描けることがわかりました。
むしろ数値入力で正確な図面を描くCADソフトは学術的なイラストに向いていました。
その後、ディテールを描き込めばリアルな魚の写真と変わらない表現ができるのでは?と思い始め、 ロリカリアを何種類か描きました。

それがネットで熱帯魚仲間の知れるところとなり、幾つか描いて欲しいと依頼を受けました。
ドイツのアクアリウム雑誌の編集長から、今度コリドラス特集をするからイラストを提供して欲しいと頼まれて幾つか送ったところ、 Amazonasという雑誌に掲載されました。
熱帯魚のイラスト9匹をA4サイズにプリントしたものが1枚2000円で売れるようになりました。
今までは好きなナマズのイラストばかりだったのですが、ある時、ベルギーのアクアリストから1枚買うから9匹かいてくれと依頼がありました。
9匹かいて2000円というのは安すぎですが、ナマズ以外の綺麗な魚の写真を幾つか提供されたので、お金はともかくチャレンジと思って描きました。
依頼主から相当ダメ出しとやり直しをさせられましたが、なんとか提出にこぎつけたのです。
当初はCADソフトで多彩で微妙な色の表現をできるかわかりませんでしたが、これがきっかけで、少なくとも熱帯魚に関する限り描けないものはないなという 自信につながりました。

その後も、海外の熱帯魚研究者からの依頼だったり、熱帯魚グループの主催者の依頼などを受けましたが、ほとんどが無報酬でした。その代わり題材となる魚 の写真の提供と、描いた魚のイラストの著作権の帰属を了承してもらいました。

今年の5月についに描いた魚の種類が500種類を超えました。
5年間で500種、1年間で100種類描いた計算です。
いろいろな魚の鱗や、模様のパターンが使いまわせるCADソフトだからできたことだと思います。
この度、500種類達成の記念として1冊本を作りました。
それがAquarium Drawing Fileです。

今後も続けていきたいと思っています。
とりあえずは衆鱗図の700種類以上を超えることを目指そうかなと思います。

岩本 光弘