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今月のエッセイ

『絵画のイメージ・花のような爬虫類』田代りえ子



私は水彩画教室で静物画を教えていますが、自分の作品は動物をモチーフにしています。
動物は全般的に好きですが、描くとなると爬虫類、海洋生物、鳥類が多いです。
毛並みより鱗や羽毛を描くのが面白いです。
爬虫類には表現の難しさゆえ特別心惹かれ描く機会が多いです。

爬虫類を最初に描いたきっかけは、公募展に出品する時に題材をとある小さな動物園で出会ったイグアナにしたことでした。
小さな恐竜みたいで、姿形は奇妙、色がすごく綺麗、この美しい色を描きたい!と思い、そしてきっと絵としてインパクトがあると思いました。
それをきっかけに、爬虫類は形や色や鱗が宝石のように美しくその美を是非ともまだ知らない方へ伝えたいと思って描き続け今に至ります。なのでなるべく忠実に再現しようと懸命に描きました。
描いてみればより良い表現をしたいと思う探求心に火がついて描いても描いてもいまだ満足しません。

爬虫類の種類によって当然ながら特性は違います。
例えば同じイグアナでも種類によって顔つき体つきや大きさや色が全く違います。
いろいろな発見をしてもっと描きたくなります。
爬虫類にもだんだんと詳しくなって行きました。
東京都武蔵野市の吉祥寺にある爬虫類カフェ「はちゅカフェ」さんにはオープン前からご縁があり私の絵を展示して頂いていますが、 そちらに行って実際に爬虫類を触ったり観察したりして描かせて頂いています。
新しい可愛いキャスト(爬虫類)が増える度に描きたい爬虫類の種類が増えます。
静岡県伊豆の河津町にある体感型動物園iZOOは爬虫類ファンの聖地と言われ多くの爬虫類の観察が出来ます。
神奈川県箱根町の箱根園どうぶつランドみんなで遊べる触れ合えるだっこして!ZOOは残念ながら爬虫類には触れ合えないのですが、 身近にイグアナ等を観察することが出来ます。

自分なりにリアルを追求し忠実に描いたけれども、色や形の稀有な美しさに私の絵を見た爬虫類をよく知らない方からは 「フィクションでしょ?」「創造でしょ?」と言われることもあります。
ほとんどがほぼ実物と同じですよ、と実物を見せてあげたくなります。
フィクションというかイメージという意味では、忠実に再現したい、リアルを突き詰めたいと思う反面、爬虫類や動物を絵画として 昇華させたいという希望も私は併せて持っていて爬虫類を花のように描けたらいいと思っています。
何故なら世の人々は花を美しいものと認識していて花の絵を喜び愛します。
反対に爬虫類を気持ち悪いとか怖いと思っている人々は多く居て、実物やリアルな絵は苦手な方でも花のように描かれた爬虫類であれば受け 入れてもらい易いのではないかと思うのです。
苦手意識のイメージをフラットにしたところから爬虫類の美しさを感じて欲しいです。

私は標本イラストや細密画ではなく絵画を描くので、絵の全体の構成が重要になります。
まるで抽象画の構成のような世界を具象画で表現したいと思っていてその努力をしています。
大きな画面で描く時は比較的リアルな具象画と全体の抽象画のような構成の両方の組合せが出来、両立出来るので嬉しく描き甲斐があります。
また小さい絵でも爬虫類を人物の肖像画のように描いてみたり絵本のイラストやアニメのように描いてみたり、 イメージを膨らませて様々な表現に挑戦しています。

今年、2019年10月31日から開催される「りかびてん@TAMA ZOO 2019」のテーマは「想像と創造(イメージとアート)」です。
私の作品のイメージを感じて頂ければ幸いです。





「LIVINGTHINGS 2017 -フトアゴヒゲトカゲー」
展示する季節の秋をイメージした作品、ダナーオレンジという色の種類のフトアゴヒゲトカゲ(左の大顔と右上)他、計3匹のフトアゴヒゲトカゲで構成しました。
左の大顔は花のようなイメージ、中央は少しリアルに説明的存在、右上はイラスト的に描きました。
額縁のように絵の周りに落ち葉を配しました。




「LIVINGTHINGS 2018 -アマゾン川―」
アマゾン川流域にいる生物をモチーフにし、抽象画のような画面構成を試みました。
世界最大の淡水魚、ピラルクーが主役です。
画面右側上から左下に横断するように居るのはグリーンバジリスク、水面上を走るトカゲです。
ヤドクガエルやピラニア、コブラ、オニオオハシ等々、また植物もアマゾン地域のものを描いています。




「イグアナ」(2019年作)
生地に描いたので布目を活かし肖像画のような雰囲気を出しました。





「ウォータードラゴン」(2019年作)
実物がまるでキャラクターのようにアニメチックだったのでアニメっぽい着色を意識しました。