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今月のエッセイ

『森と清流が育む豊かな自然に魅せられて』浅井粂男



昨年11月、岐阜県美濃市にある県立森林文化アカデミー(森林資源を開発育成する人材を育てる専門学校)の翔風祭(学園祭)に「里山の自然」展というテーマで参加させていだき、 岐阜県が、森と清流を大切な自然資源として保護育成に力を入れていることに感動いたしました。
私の住む下呂市は飛騨高山からJR高山本線で40キロほど南下した飛騨川の中流域にあり、東方25キロほどに活火山の御嶽山があり、湯量豊かな温泉が湧き出ています。
御嶽山の噴火による大量の溶岩流は繰り返し谷を流下し、写真の巖立柱状節理は54000年前の摩利支天火山群の活動により噴出した溶岩が17キロ流下し固まったもので、現在の下呂市小坂町の近くまで迫ってきています。
また下呂市全体が、日本三大断層の一つに数えられる阿寺断層帯の上にあり、最近まで活動し今も生きている無数の活断層があるそうで、私は大変なところに移住してしまったことになります。
しかし森と清流は申し分なく素晴らしい。
いつかはきれいな水の湧き出るところに住みたかったけれど、我が家の裏庭の石垣の間からは年中枯れることのない冷たい湧水が出て、サワガニやカワニナ、アカハライモリ、カジカガエルが住み着いています。
きれいな湧水のある暮らしには満足しています。
少し離れた森にはモリアオガエルを発見しました。
オオサンショウウオに出会うこともあるそうです。
サルやシカは日常的に里へ現れますが裏山に少し上るとカモシカがみられるそうです。
熊の出没は日常的ですが、人に被害は出ていません。 御嶽山西麓を源流とする飛騨川(当地では益田川という)は木曽川水系では一番大きな支流で流域面積では本流より大きいかもしれません。
水は火山性の濃飛流紋岩や花崗岩の深い渓谷を潜り抜けて透明に澄み、谷川ではイワナ、アマゴが、本流ではハヤ、ウグイ、アマゴのほか特に夏は肩高で幅広の最高級の鮎が育ちます。
水がきれいで生き物が豊かな飛騨川は、地元の人々にとってはかけがえのない大切な自然遺産です。
古来飛騨地方では薬草、食草に憧憬が深く、おお昔よりなくてはならない生活の糧としても利用され育てられても来ました。
下呂市の四美という谷には県立の広い薬草園があり、400種類の薬草を試験的に栽培しています。
自然が好きで、身近な動植物を描いてきたものとして、残りの人生をこの場所を自分のライフワークのフィールドとして虫や草花を絵にしていけたら幸せです。