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今月のエッセイ

2009.1.2 「汗顔の極み・サカツラガン」松原巌樹


作品のタイトル


 昭和10年代の写真集には、この鳥が千葉県行徳の空を群れて飛ぶ様子が残されているが、近年では、まれに一羽が局所的に飛来したことが、大騒ぎで報告される迷鳥の一種類となってしまった。
頬の部分が赤っぽいので、酒面雁(さかつらがん)という名がついたらしい。
12月ともなると、巷にサカツラマンが増すが、この鳥は年中酒面である。

 さて年末には宅配便も増える。我が家でも例外ではない。
ある日作業衣の若者が訪れた、窓越しに見るとデパートの包みを抱えているので、「ちょっと待ってください」と言って、急ぎ印鑑をとりに居間に戻った。
「お待たせしました、ご苦労様」と言いながら印鑑を差し出し、荷物に手を伸ばしかけたとき、若者は斜め前の家を指差しながら

「こんにちは。来週ここに越してくるのでご挨拶に上がりました」

「ゲッ!・・・ゴメンナサイ」