今月のエッセイ
2012.10.22 『屋久島」』佐藤忠雄
この夏、仕事ではありますが屋久島を訪れる機会がありました。
二泊三日というかなり厳しいスケジュールでしたがとりあえず縄文杉と苔の森へは足を運ぶ事が出来、
足がガタガタになりながらも取材の目的は達成しました。しかし複雑な植生のこの島をどのように絵画として
表現したら良いものか頭を抱える日々がしばらくは続く事になります。
それにしても屋久島の植物達の醸し出す独特の空気には圧倒されます、様々な気候の変化に
対応した結果であろう奇怪な形状の木々を見ていると神々しいというよりはそのたくましさ,力強いさに
驚かされます、それに比べて動物達は体が一回り小さく穏やかな印象を受けたのですがどうしてなのでしょう。
また、きれいな水が流れる川に生き物の気配がない、川石をひっくり返しても沢ガニくらいで水生昆虫が
見当たらない、東京の多摩川から持ち込まれたヤマメはガイドさんによると問題なく繁殖しているとのこと
ですが残念ながら見る事ができませんでした、個人的には魚の気配のない川がどうにもさみしく感じて
なりませんでした。
今回私が縄文杉を目指した日、登山者の数は300人以上と聞きました、それだけ多くの人々が
特別な所という事もあるのでしょうが、屋久島の自然に興味を持ちそこに身を置く事で謙虚に何かを
感じ取ろうとしている、やはり神が宿るのでしょうかそれとも・・・
私も今度はもっとゆっくり滞在してみたいと思った旅でした。