今月のエッセイ
2014.1.14 『バイコフの夢に酔って「オオワシ」』松原巌樹

冬鳥として北日本の海岸に渡来するオオワシは翼を広げると
2メートル半もあります。
北海道の知床半島にはことに多くやってくるので、オジロワシともども
その姿が見たくて、毎冬のように羅臼を訪れます。今では世界遺産に登録
されて、その自然の豊かさと雄大さが広く伝えられて、人気抜群です。
海岸に迫った断崖に原生木が繁り、早朝から宿を出て巨木の枝に
止まる鷲を丹念に探すのがとても楽しいのです。
流氷の流れ着く日には、その氷の上と樹の枝とを行き来して、一層楽しませてくれます。
早朝や夕方には急峻な原生林の雪の斜面にエゾシカの群れが出現して、
自然の舞台は一段と豪華になり感動の連続です。
ふと昔読んだロシアの作家バイコフの「北満の樹海と生物」なんかを思い出して
吹雪の中で震えながらも結構ロマンチックな気分になってきます。
今夜の宿の宿泊客は僕ひとり。一日中吹雪のなかに過ごして凍えた手足を
胃袋ごと温めようと、楽しみの夕飯時。・・なんと酒は前日に宿の主人が吞み干してしまい
今日の吹雪で買い出しが出来なかったと謝るではないか。
えーい、何がロマンチックだ。「鷲にさらわれてしまえ!」