今月のエッセイ
2014.8.12 『森林公園と私(覚書)』安在惠
関東地方の地図を見ると、東京都の北側全体におおいかぶさるように埼玉県がある。東
京と埼玉に神奈川の一部を併せたのが旧国名「武蔵国」であるという。サツマイモのよう
な形で東西に広がる埼玉県は、西半分は丘陵地帯から秩父の山々へとつづき、東半分は関
東平野の一部をなしている。その東西のちょうど中央あたりに、いくつもの里山を形成し
ているのが比企丘陵で、比企北丘陵の一部が囲い込まれ、南北に細長い形(*)で国営武蔵丘
陵森林公園がある。(*)南北約4km、東西約1km。(以下、単に森林公園と記す。)
森林公園は国の明治百年記念事業の一環として整備され、1974年7月23日、日本初の
国営公園として開園した。今年は開園40周年にあたる。「整備基本方針」の中に「現存の
地形および植生を十分に考慮するとともに池沼は原則として改造しません」の一項が見ら
れる。面積は304㌶、東京ドーム65個分にあたり、ゴルフ場ならば少なくとも三つは造る
ことができる。広大かつ自然豊かであるが囲い込まれており、入園料が必要である。
私が現在住んでいるのは、森林公園の大半がある町の隣町である。移り住んだのは、開
園2年前のことで、さらにその前年にはすでに私鉄の「森林公園駅」ができていた。建売
住宅団地の宣伝パンフレットには、新しく造られる森林公園にも近いことが、団地の「魅
力」の一つとして載っていたように思う。40年余を経て、森林公園は、現在の私にとって、
以前に増して多くの時間を過ごす、掛け替えのない場所である。
森林公園には、週に一度は出かけようと思っている。南口、中央口、西口、北口の四つ
の入口のうち主に南口、中央口から年間パスポートを使い入園し、お昼をはさみ2時間半
ほど過ごす。南口からの場合は南半分、中央口からの場合は北半分の園内を、さまざまに
コースを設定し、森の中を「歩く」(1万歩ほど)、写真を「撮る」、昼食を「食べる」とい
うのが通常の過ごし方である。ほとんど単独行で、森林浴の効果も期待しながら、身体的
にも、精神的にもほとんど唯一の健康法となっている。

タマゴタケ(2013.9.9撮影)
根元部分のタマゴ型のツボが特徴。
コブシ(2013.10.31撮影)
秋、たわわな果実の果皮が開裂している。

フウ(2014.1.13撮影)
秋に落下せず越冬するイガ状の果実。
フクジュソウ(2014.3.6撮影)
梅の花とともに、春の陽射しを受ける。

シライトソウ(2014.5.27撮影)
野草コースにて。幻想的雰囲気。
ヤマユリ(2014.7.11撮影)
園内各所に自生し保護されている。