今月のエッセイ
『7月のエッセイ』大見千代子
私が植物画に魅せられたのは、よく代表的な作品に挙げられるバラの植物画ではなかった。
思い返してみれば、すべて実が描かれた絵。
立体的で重みのある物を描いた絵に、奥行きや重厚感を感じたからかもしれない。
印象的な実を見つけると、そ花にも興味が沸き、植物の神秘に惹かれ、描いてみたくなる。
ここに取り上げたサンショウバラも、箱根のホテルの庭で、たわわに実ったトゲトゲの実を見つけ、翌年の春に咲いたヒラヒラと繊細な花とのギャップに益々魅力を感じ、描いた。
サンショウバラは箱根にのみ自生していた日本の固有種であり、樹高5メートルにも育つ、世界最大のバラでもある。
もう一つ、植物画を描く時、1年の変化という部分に焦点をあてて描くことが多い。
ここに挙げたオーストラリア原産のブラッシの木も、花の蕾の形、花、実の変化がとても面白い。
地味な形だが、枝にかじりついたような実は、何年もそのまま枝に残り、山火事の時に実がはじけて子孫を増やす。
オーストラリア原産のバンクシアと同様である。
今は、キリの木の1年の変化を描いている。
高い所に咲く花なので、入手がむずかしいが、春、夏、秋、冬と作品を増やしている過程も楽しい。
大見千代子

サンショウバラ

ブラッシノキ