理科美トップ > 今月のエッセイ

今月のエッセイ

『おれん』七宮賢司




明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、私は12年程カメと暮らしている。
都内のショップでたまたま見つけた12cmほどの二ホンイシガメだ。

かつて食玩ブームの火付け役となったチョコエッグの日本の動物シリーズ第3弾にもラインナップされていた黄褐色の甲羅が特徴の日本固有種のカメで、環境省レッドリストには準絶滅危惧とあり生息数は減少しているようだ。

クサガメに比べて臭いもなく黒目がちで可愛く甲羅のオレンジの発色も良く一目で気に入った。
2500円ぐらいだっと思う。で、即買い。おれんと命名した。

年齢は不明だがある程度成長した個体だったので飼育には特に面倒なことはなく数日に一度の水替えと日光浴、配合乾燥飼料を与えるだけ。
食性は雑食らしいが肉食傾向が強く魚の切り身やミミズが大好物だ。
特に生きたミミズには反応が良く、面倒だがごくたまに近所の空き地で採集し放り込む。
ミミズも首や足に巻き付いたり必死に抵抗するものだからおれんちゃん大興奮。
まるで風水の四神の玄武の図である。

玄武

玄武


現在は75×55×30cmのケースで飼っているが、硬い甲羅のせいで出せ出せコール(外にでようとする行動)がうるさくそれが一日中続く。
根負けして室内に放すとかなり活発に歩き回り落ち着く場所に落ち着く。
開放中に餌を与えると銜えた瞬間に何故か猛ダッシュで逃げる。
その素早さたるは凄まじくとてもカメとは思えないスピードである。
そして何年飼っても飼い主の顔を覚えることもせずなつくこともない。
私の姿を見ればダッシュで逃げる。

かなり後で判ったのだがオレンは雌である。
独身なので繁殖はできないが数年前から初夏に3センチほどの卵を5~6個産む。
そして全部食べてしまう。

晩秋から気温が下がってくると動きが鈍くなり極端に食欲がなくなる。
出せ出せコールもなくなり静かになってとても良い。

そんな感じで何となく飼い続けて月日がたち気が付けば甲長も20cmと立派な成体となった。
二ホンイシガメの寿命はだいたい20年、場合によっては30~40年ほど生きることもあるらしい。
特に感動も不満もなくクールな同居がこれからも続いてゆくことになるが飼い主のことを一体どう思っているのか一度聞いてみたいものだ。

春になったら狭山公園に散歩にでも連れて行こうかな。

ちなみに、名前の『おれん』は当初は甲羅の色から『おれんじ』とつけたのだったが、呼びにくかったせいかいつの間にか短縮された。
後に雌と判明したので『おれんちゃん』古風で女らしくていいかなと。

おれん

おれん甲羅干し中


おれん

甲羅が褐色になってきたおれん