今月のエッセイ
『ノーベル賞騒動!?』安在惠
2015年10月6日、前日の大村智さんのノーベル生理学・医学賞受賞につづき、梶田隆章さんの物理学賞受賞が発表され、二日連続の明るい話題、嬉しいニュースとして大々的に報道された。
物理学賞の受賞理由は「素粒子ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」というもの。
一見して、理解するにはそれなりの勉強が必要と思われるが、それはおくとして、ここではそのニュースがもたらした身辺雑記ともいうべきことを記しておきたいと思う。
ノーベル賞は、世界で最も権威ある栄誉であることは疑いない。
受賞者の業績は当然のこと、生涯の歩みなども事細かに紹介されるのは、日本だけのことであろうか。
1949年に湯川秀樹博士が受賞されて以来、梶田さんが日本人として24人目の受賞者である。
ノーべル賞に限らないが、スポーツなどでも、偉業を達成した人が身近な存在であればあるほど、その偉業を讃える気持ちが、よりつよく大きくなるのはごく自然なことと思われる。
梶田さんのノーベル賞受賞TV報道の中で、出身地が埼玉県東松山市であることが報じられた。
えっほんと?東松山市は私の住む町と接する隣りの市である。
私はすぐにインターネットで検索、文字情報で確かめた。
そこにはさらに驚くべき?事実が書かれていた。
出身の小・中学校が、どちらも現在、二人の孫娘たちが通っている学校ではないか。
そうして一気に、梶田さんのノーベル賞が私にとって地理的な意味以上にいっそう身近なものとなったのである。
ここに紹介するのは、梶田さんの前で読み上げられた6年生の作文の冒頭部分である。
「花と緑とウォーキングの街」それが私の住んでいる東松山市のニックネームです。
特に都会でもなくいなかでもない街です。
大きな台風が来たり、大雪が降ることもそんなにはなく、気候もおだやかな普通の街でした。
そして、野本小学校も市内ではいなかにある普通の小学校でした。
でも今はちがいます。
ノーベル賞受賞者の生まれた街、そして通っていた小学校として全国から注目が集まりました。
テレビの取材も何度も来ました。
私も一秒くらい映り、友達もインタビューされました。
市役所や私たちの学校もテレビで何度も見ることができました。
ちょっとじまんしたくなるし、全国の人が見たんだと思うと、とてもうれしいです。
(後略)(東松山市役所ホームページより)
気持ちが素直に表わされ、とても好きな文章である。
アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日、スウェーデンの首都ストックホルムで授賞式が行われ、それに続く晩餐会とともに華やかに報道された。
東松山市は、梶田さんに名誉市民の称号を贈ることになり、その授与式と梶田さんの記念講演会が1月13日に行われることになった。
この「会」のプログラムを見ると、[第一部]式典の部の最初に「祝賀演奏(南中学校吹奏楽部)」とあるではないか。
孫の部活は吹奏楽部である。梶田さんの講演も聞きたいが、まだ聴いたことがない南中吹奏楽部の演奏も是非とも聴きたい。
年が明け、「会」の入場整理券が市役所他で配られることになった。
配布当日の1月4日、行列を避け、早朝7時頃市役所に到着。
が、行列は見当たらない。配布開始の8時半過ぎに難なく手に入れることができた。
これはどうしたことだろう。
盛り上がりに欠けているな、もう熱がさめてしまったのかな。
そして「会」の当日を迎えた。午後5時30分開会である。
早めの4時頃、市民文化センター裏に無事駐車。そして会場入口側の広場に回った。
そこで、またも驚かされたのである。
大勢の人たちが広場におり、さらにぞくぞくと集まってくるのである。
実は、整理券は開始から15分間で配布が完了したという。
短時間のうちに大勢が押し掛け、私は、早朝待機が功を奏し、その光景を見ることなく整理券を受け取れたということになる。
会場はロビーにまで人があふれ、1500人以上の超満員の会場は一体感があり、満足感にひたされた柔和な笑顔、笑顔につつまれ「会」は無事終了した。
先に紹介の作文は、花束贈呈などの前に読み上げられ大きな拍手をうけたものである。
東松山市の催しは大成功であった。
騒ぎ?はまだつづく。
「会」の翌日、午前7時台のNHK・TVが、故郷へ錦を飾る梶田さんの姿とともに前日の催しを全国ニュースで報じた。
そこには「一秒くらい」の瞬時の映像として、吹奏楽を演奏する孫の姿が流れたのである。
録画の備えをしておらず他の時間帯のニュースを追ったが、再度のニュースは流れず録画はあきらめざるをえなかった。
しかしさすがに現在はIT社会である。
その後NHKオンラインで視聴できることが分かり、二日後にはパソコンに取り出すことに成功した。
梶田さんのノーベル賞受賞を巡っては、富山市、越谷市などが名誉市民の称号を授与、川越市が市民栄誉賞、埼玉県が県民栄誉賞を授与するなど、その栄誉をたたえた。
*東松山市ホームページ、東京大学ホームページなどを参考にさせていただきました。

東松山市立野本小学校校舎の祝賀横断幕(2016.5.214運動会の日)

2016.1.13東松山市名誉市民称号授与式・記念講演会しおり

2016.1.13東松山市名誉市民称号授与式における
同市立南中学校吹奏楽部の祝賀演奏(1/14朝、NHKニュース画面より)