Essay

2022.12.01

『理科美コラム』上野郁代

 上野です。
東京の剥製店に10年弱勤めていましたが、8月で退職し、故郷の石川県輪島市で独立開業することにしました。
独立を決めたのはコロナ禍以前のことだったので、ようやくといった気持ちです。9月初めに引っ越したのでもう3ヶ月弱たちますが、工房を一から好きなように組み立てることは(引っ越す前はとても楽しみにしていたのですが)私にとって苦手な作業だと分かりました。
大きな机の上に材料や道具が散らかり、あつらえた棚の中はなぜかスッキリしている謎の状況です。
以前のように狭いながらも初めから整理された工房のありがたさを感じています。

 最近の剥製製作の近況として、哺乳類の剥製の芯(マネキン)製作に使うウレタンがコロナの影響により不足したため、昔ながらの木毛(木製の梱包材)をより頼りにするようになりました。元々私はネズミなどの小型哺乳類は木毛、タヌキくらいの中型から〜大型哺乳類はウレタンで作成していましたが、今は小型〜中型までは木毛で作成するようにしています。

 木毛で芯を作成するやり方は、自分の力で圧縮して固める必要があるので、大きくなればなるほど力が必要で疲れます。
ウレタンの場合はブロックから削り出すので力は入らず、筋肉の細かい凹凸の再現もスムーズにできます。
木毛でもそういった造形はできますが、ウレタンの方が形を掴みやすい気がします。
筋肉の流れが目立つ短毛の動物を作る場合はウレタンの方が良いと現時点では考えています。
 小型の場合、ウレタンだと細い部分が折れやすく、木毛の柔軟さがとても便利です。ですがリスや大型のラットくらいならウレタンを使う人も相当います。体を型取りしてウレタン原液を使って作るのも賢いやり方です。
大型だと型取りするのも大変なのでまずしませんが、小型だとそれも容易。が、私の場合は型取りに苦手意識があるのでやりません、、。
なんでも人それぞれの感覚がありますよね。
ウレタンはなるべく発泡倍率低めの密度がある物を使いますが、それより強度が弱く、しかしその分安く、そして簡単に手に入るスタイロフォームでジャッカルを作る名人を目撃したこともありますし、多分それぞれの経験値と好みでやり方を選んでよいのです。私はウレタンブロックを削る時に出る細かい粉も苦手なので、よほど大型でない限りは木毛に頼っていきたい所存です。
 以上、取り留めなく書きましたが、全て体の芯の作成の話でした。頭部の芯は全て型取りしてウレタン+粘土肉付けで作成しています。
また、台座に固定するための針金、棒ネジの仕様ですが、木毛の場合は針金を芯に、そこに巻き付けるようにして成形、ウレタンの場合は成形した後で針金を入れる部分を削り、納めてから再度ウレタン原液で蓋をします。

 春先にサーバルキャットを作りまして、これは木毛で行いました。
 恥ずかしい点ばかりですが、剥製の作りの参考にはなると思います。

es20231211_smnnul20es20231211_smn

Copylight © rilkabi all rights reserved.