2018.4.12
ずいぶん前に仲の良い先輩がポツリと言った。
「最近は毎年ひとつずつ桜の名所を訪ねることにしているんだ」 風流や風情などとは無縁な旅行をするこの人。
花になんか見向きもしないし、花を目的に旅行などしない…はずの先輩の意外な言葉。
「桜ってほんの短い間しか咲かないだろ。
逃したらまた一年待たなくちゃならないんだよ!
来年も見られる保証はないんだぜ!
それを考えると涙が出てくるんだ」 そんな力説に「今度写真を撮ったら見せてくださいね」と社交辞令で返した。我ながらドライである。
年を重ねると嗜好が変化するという。
趣味的な事から食べ物の好みまで、程度の差こそあれ、こういう変化は誰にでも訪れるようだ。
先輩の心の変化もそういったものなのだろう。
…と、人ごとのように考えてたら近年、私にも訪れた。「春だから桜を見に行こう!」という気持ちが。
「動物派」の私にとって「植物」は少々退屈なのだ。
積極的に「見に行く対象ではない」のである。
なかったのである。
さて、京都に仁和寺という名だたる桜の名所がある。
春の境内には様々な種類の桜が咲き誇る。
中でも丈の低い御室桜(おむろざくら)は満開の時期を迎えると、それは見事なものだ。
たいていの桜の花は見上げる高さに咲くものだが、御室桜は目の高さに花のボリュームが集中する。
どこを向いても花に視界を遮られ、圧迫感すら感じるのだ。
この仁和寺に「花びらが緑色の桜」があるというウワサを聞いた。
何でも、普通の桜よりも開花時期が遅いらしい。
なかなか時間が取れず、機を逃したと思っていた私にはうれしい情報だ。
今年の桜は仁和寺で見よう
いざ京都へ!
広い境内の中から探し出すのはさぞかし骨が折れるだろう…と思っていたら山門近くに目的の桜はあった。
この桜、名を「御衣黄(ぎょいこう)」と言う。
思っていた以上に緑色が濃い印象だ。
花びらに葉緑体を持っているからだそうで、そのこと自体が大変珍しいのだとか。
事前に知らなかったら花を散らした後の新緑と思い、見逃すところであった。
まったく世の中は広い。
まだまだ知らない、面白い事がたくさんある。
好奇心を刺激されたら見にいかない訳にはいくまい!
同じ「桜を見に行くという行為」でも先の先輩とは随分と趣を異にする様だ。
私を突き動かすのは風流や風情ではないらしい。
こんな私にもいつの日か訪れるのだろうか、「花に涙する」時が…
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