2022.01.01
僕が描く山岳画は北アルプスを中心とした信州の山々が多く、モチーフとなる山には実際に登ってテント泊でスケッチをしています。
山の天候は変わりやすく、晴れていても突然横殴りの雨が降ったり、一帯をガスに包まれたり、冬は吹雪いたりと、毎回思ったようなコンデションで描けることは少ないです。
昨年の安曇野市田淵行男記念館での展覧会「スズキサトル ブッシュクラフト展~野外道具と山岳画~」でも、僕が描いた山岳画を見て何故、羽ペンや竹ペンで描かれている
のですか?と、来館された方々によく質問されることがあり、その質問に対し「山は時間とともに変化し予測できない生き物のようなものなので、山の絵を描くときは画材も自分の都合で思い通りにならない道具で描くようにしています。」などと、答えたかと思います。
まず使うペンは自作の羽根ペンと竹ペンなのですが、これはどちらも思った通りの線が描けません、線を細くしたいところが太くなったり、太くしたいところが細くなったりと予想のつかない線になったります。
また使う紙は手漉き和紙の十匁(じゅうもんめ)という和紙の中で最も厚いものを使っているのですが、普通の紙より表面の凹凸があるので、よくペン先が引っ掛かったり、強く力を入れすぎると紙が毛羽立ったりします。
思いのほかスムーズに描けません。
着彩には水彩で色を付けるのですが絵の具が予想以上に紙に吸い込み、あらぬ方向に滲み広がります。
同じようにインクもよく滲むので、正確に描くような細かいペン画には全くもって向いていない紙かもしれません。
ただ、最終的にはそうしたコントロールが難しい画材で描いた絵は、いい意味での完成の予想を超えた自然に近い絵になったりします。
なので僕にとっての山岳画は普段のイラストレーターとは違う正確さや合理性からはかけ離れた画家としての絵ということになります。
『思い通りにならない自然や山を描くのに、同じように思い通りに描けない画材道具を使って描いたほうが、より自然を自然に表現できるし何より画家としてその方が面白い。』

北アルプス常念岳山頂(5月頃)


山岳画「前常念岳」(羽根ペン・水彩・和紙)


自作の画材道具類
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